介護される人側に合わせて軟らかさを示す介護食の表示制度が新たに始まりました。表示商品はすでに店頭に並び始めており、高齢者の低栄養状態を改善する効果が期待されています。
■「低栄養」予防に期待
表示制度は昨年、農林水産省によりスタート。同省はこの方式で表示する介護食を、「スマイルケア食」という呼称で普及させたい考えです。
表示されるマークは、食べる人の状態に応じて3種類に分類、(1)かむことに問題のある人向け、(2)のみ込むことに問題がある人向け、(3)どちらも問題ないが、健康維持上栄養補給を必要とする人向け、がそれぞれ黄、赤、青に色分けされています。0〜5の数字は、小さいと軟らかく、大きいと硬いことを意味しますが、数字はあくまで目安です。
「0」と表示されるのは、ゼリー状の食品。飲み込みに問題のある人向けのゼリーは、「2」のペースト状や、「1」のムース状の食品よりものどつかえがなく、食べやすくする必要がありますね。 従来、介護食の柔らかさを示す統一基準はありませんでした。嚥下障害に詳しい国立国際医療研究センター病院の藤谷順子さんは「統一基準ができたことで、
家庭で介護する場合に病院との情報交換がスムーズになりました。介護食を作る際の目安にもなり、消費者にメリットは多いはず」と話します。
こうした取り組みの背景には、食べることにトラブルを抱え、低栄養に陥るお年寄りが多いという事情があるのです。咬んだり飲み込んだりといった口の機能の低下で食べられない人や、口の機能には問題がなくても、加齢が原因で食欲がない人も。 厚生労働省がまとめた2015 年の「国民健康・栄養調査」では、65 歳以上の高齢者は16%以上が低栄養でし
た。
藤谷さんは「味や食べやすさ、栄養価に配慮した介護食品が充実すれば、食事の楽しみが増し、低栄養も防げるはず」と表示制度の効果を期待します。
メーカー各社も、既存商品へのマーク表示に動き出しました。介護食約50 種類を展開するキユーピー食品は、「やさしい献立」シリーズの雑炊3種で黄マークを取得しました。軟らかさは、いずれも「容易にかめる」を意味する「5」。表示商品はまもなく店頭に並ぶはずです。結語として「かんだりのみ込んだりに問題がある時はまず、医師や歯科医師、管理栄養士など専門家に相談をしてください」と呼びかけています。
(読売新聞より)
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