砂糖を食べ過ぎると虫歯になるだけでなく、肥満やメタボリックシンドロームなど、心身の成長には害である、との情報があります。一方で、1997 年に国連の機関であるWHO(世界保健機構)から出された「砂糖摂取が落ち着きのない、怒りっぽい等の子どもの行動異常や糖尿病に直接結びつくことはない。砂糖摂取が肥満を促進することはなく、砂糖有害論には科学的根拠がない」との宣言を盾に、むしろ人間にとって必要な栄養素であり、積極的な消費を前面に押し出す情報もあります。 こうした情報は、それぞれの持論に有利な側面だけを採用しているケースが多く、鵜呑みにするのは考えものです。
砂糖が、ふんだんに使えるようになったのは、日本では戦後しばらく経ってからで、それまでは一般家庭での日々の使用量は限られ、砂糖の健康への影響については、問題になりませんでした。ところが、経済成長で国民全体が豊かになり、砂糖の価格が下落し、家庭や加工食品に多量に使われるようになりました。私たちは食べ物の甘さに慣れ、より強い甘さを求めるようになり、幼児からお年寄りまで必要以上に砂糖の摂取量が増えてしまいました。
日本小児歯科学会では、幼児に必要な1日あたりの間食は、1日に必要な総エネルギー量の10〜15%を目安に、1 〜 2 歳児では約100 〜 150kcal とされています。また、平成26 年3月にWHOから出された「糖分摂取量の新ガイドライン案」では、「1日あたりの糖分摂取量は小さじ6杯程度(25g)までにするべき」と勧告し、これは1日の糖分摂取量は総エネルギー量の10%未満ということになります。 ちなみに、厚生労働省健康局の「日本人の食事摂取基準」(2010 年度)では、「糖類摂取量基準は策定していない」としています。 いずれにても、適正量の何倍もの量をとれば、人体に悪影響をおよぼすのは当然のことで、摂取する量や摂りかた、普段から心身や口の健康に留意し、摂取することが肝要と考えます。
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