健康保険での歯周病の治療は、そのルールに沿って進めていきますが、患者さんの希望がルールにそぐわないケースもあります。
　例えば、「忙しいから一度に全部の歯を掃除してほしい、短期間で治療してほしい」という場合です。気持ちは理解できますが、一度で全ての歯の掃除はできないことがあります。また、歯周病の病態から判断して、治療期間の短縮ができないこともあります。どんなに急いで治療しても、歯ぐきが治癒する期間は、あくまでも患者さんの治療後の傷を治すスピードによるためです。
　歯周病の検査なしでは歯の掃除はできませんし、歯磨きがよくできていないのに治療を先に進めることもできません。複雑で多様なルールの中で、ルールに沿って治療を進めるのが健康保険での治療であり、ルールを逸脱するのであれば保険適応外になります。
　例えば、歯周病治療の一つに歯ぐきの手術があります。その時に保険適応外の材料を使うと、最初の治療行為から全て健康保険は認められなくなり、自由診療として全額患者さんの負担になります。もちろん、そのような保険適応外の材料を使用する場合には、歯科医師が保険適応の材料だけでは良好な治療結果が期待できないことなどを説明し、患者さんの同意が得られた上で使用します。最終的な治療の選択は、あくまでも患者さんご自身の判断です。治療のリスクや効果などを説明したり判断の材料を提示することが、歯科医師の仕事です。もしわからないこと、不安なことがあれば、気軽にかかりつけ医に相談してください。