近年医療の分野では、フレイルという言葉がクローズアップされています。 フレイルとは、弱さ、脆さ、虚弱を意味する英語のfrailty から作られた新しい造語です。 2014 年5月、日本老年医学会では、高齢者に起こりやすいこのfrailtyに対し、早期に気づき適切に介入すれば元に戻るという意味があることを強調し、フレイルという日本語訳にすることを提唱しました。 フレイルには、身体的フレイル、精神的フレイル、社会的フレイルがあり、これらは相互に関連し合っています。 社会的フレイルとは、地域や社会との繋がりが疎遠になることで起こる機能低下の前兆で、特に独居の高齢者などによくみられるフレイルです。簡単に言えば、フレイルとは健康と要介護の中間的な未病状態ということでしょうか。フレイルの基準として、アメリカの老年医学者リンダ・フリードが提唱した定義を紹介します。
- 体重減少・・・意図しない年間4.5kg または5%以上の体重減少
- 疲れやすい・・・何をするのも面倒だと週に3、4日以上感じる
- 歩行速度の低下
- 握力の低下
- 身体活動量の低下
以上5項目のうち、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。これらは身体的フレイルですが、これが精神的、社会的フレイルと相互に関わってくるのです。
さてオーラルフレイルというのは、この口腔編です。 発音、咀嚼、嚥下といった口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含みます。具体的には、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増える、口腔乾燥等ほんの些細な症状であり、見逃しやすく、気づきにくい特徴があるため注意が必要です。 特に口腔という器官は、栄養摂取のための消化器官の入り口であり、その機能が低下すると、体力、抵抗力、免疫力の低下に直結します。機能訓練というと大げさですが、体操や運動くらいに気軽に考えて、日常生活の中で習慣化することが何より大切です。
具体的な例としては、「あいうべ体操」(大きく口を動かし、特に「べ」では舌を突き出す)が有名ですが、これは口輪筋をはじめとする表情筋と舌の運動です。 機能訓練以外でも、人と話す(内容はともかく)、会食する、笑う、泣く等、感情(感動)を伴いながら口を動かすということが、フレイルの改善にはとても大事なのです。「笑い」が、がんの予防になるという話がありますが、これは「笑い」により副交感神経の機能が高まることで、自身の免疫力をも高めるという良い例でしょう。
「笑う門には福来たる」―― 表情筋と舌を使う生活を心がけましょう。
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