最近は、歯並びに対する認識の高まりか、学童期に何らかの事情で矯正治療を開始できなかったためか、成人してから矯正を考える人が増えています。 矯正は、個人差はありますが、10歳前後に治療を開始できれば理想的ですが、特殊な疾患等がない限り年令制限はなく、何歳からでも始められると考えてよいでしょう。成人の矯正治療は、基本的には子どもの治療と変わりませんが、いくつかの特殊性があります。 まず、矯正装置が見えることについて、大人になると抵抗を感じる人が多くなります。その場合には、歯に直接接着するブラケットという金具をステンレス製からセラミック製やプラスチック製のものにすることで、ずいぶん目立たなくなります。次に、歯周病がある場合です。そのまま矯正治療を始めると、歯に加わる力の変化や装置周囲のブラッシングがより困難になるため、歯周病の進行、悪化の恐れがあります。矯正治療開始前に、歯周病の治療を行う必要があります。さらに子どもに比べ、治療期間が長くなる傾向があります。矯正治療での歯の移動は、歯の周囲にある繊維や骨といった歯を支える歯周組織に改造が起こるために可能となります。歯を押した側の骨が消え、引っ張られた側の骨が新しく作られることで歯が動くのです。しかし、成長期を過ぎた成人では、新陳代謝が鈍くなるため、改造がやや緩慢になります。また、骨の成長が終了しているため、歯の移動が制限され、矯正のための抜歯が避けられないケースがやや多くなるようです。 矯正は、むし歯の処置のように短期間で終わるものではありませんから、歯並びがきれいになったときのことを楽しみにしながら、根気強く治療に臨むことが大切です。
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