最近では、アルツハイマー病という病名はすっ
かり社会に定着し、老人性痴呆症といわなくなりましたね。 2010 年に、アルツハイマー型認知症の発症について以下の仮説が提唱されました。アルツハイマー型認知症の原因と考えられている仮説の中でも、現在最も有力と言われているものです。
- たんぱく質を分解する酵素の働き
の変化により、蓄積しやすいアミロイド
βの割合が増えて脳に溜まり始める。
- アミロイドβの毒性により、神経
細胞やシナプス(神経細胞同士を繋ぐネットワーク)
が傷つけられ、糸くずのような神経原線維変化を起
こす。
- 傷ついた神経細胞が次々と死んでいくこと
により、脳が委縮し認知症を発症する。
さて、歯周病がこの認知症を悪化させるメカニ
ズムが解明されつつあります。アルツハイマー型
認知症を発症しているマウスに歯周病菌を感染さ
せ、感染させていないマウスと脳の比較を行った
結果、前者は後者に比べ、アミロイドベータの量
が1.4 倍多かったことがわかりました。
歯周病菌が破壊された時に出るエンドトキシン
という毒素が、血流にのって全身にそして脳にも
運ばれます。その結果、免疫機構に関わるサイト
カイン(細胞間の情報伝達物質)が増加し、これ
がアミロイドβを増加させると考えられています。
サイトカインが関係するところは、歯周病が糖尿
病を悪化させるメカニズムとよく似ています。つ
まり、歯周病の予防は認知症の予防にもなるので
す。その他、アルツハイマー型認知症の予防として、
アミロイドβを効率的に排出すること
が重要ですが、そのために日常的に以
下のことに心がけるとよいでしょう。
- 有酸素運動
有酸素運動をすることで、神経細胞を活性化するホルモンが分泌されることやアミロイドβを分解する酵素を増やすことが期待できます。また、運動後だとよく眠れるのでアミロイドβの排出にも好影響をもたらすと考えられます。
- コミュニケーション
他人と会話をすることは脳を活性化させると言
われています。特定の人と同じような会話をする
よりも、色々な人と出会って新鮮な会話をすると
より効果的です。お年寄りは、孫などと積極的に
おしゃべりすることも大切です。
- 知的活動
頭を使いながら指先を動かすことを知的活動と
いい、これも神経細胞を活性化するのによいとさ
れています。具体的には、囲碁や将棋、裁縫など
があげられます。
フレイルとは、年齢に伴う虚弱、つまり筋
力や心身の活力が低下した状態のこと。特に
滑舌の衰え、食べこぼし、わずかなむせ、噛
めない食品が増える等、歯や口の機能が虚弱
になることをオーラルフレイルといいます。
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