軽く口を閉じて歯の存在を意識してみると、上下の歯と歯はほとんど触れていないことがわかります。実は一日の生活の中で上下の歯が完全に接触している時間は、約15分であるといわれています。意外に短いですね。朝昼晩の食事とおやつの時間に、噛むことによって歯と歯が接触する瞬間を合計した時間が15分です。
しかし、いったん「歯ぎしり」の習慣ができると、長い人では一晩でなんと1時間半も噛みつづけていることがあるのです。歯ぎしりで、歯にかかる圧力は、チューインガムを噛む時の力の数倍〜数十倍。知らず知らずのうちに歯に負担を与え、歯ぐきの血行に悪い影響を与えています。
歯とそれを支えているあごの骨の間には、歯根膜という中間組織があります。この歯根膜の中を通る血液は、噛むことであごの骨側に押し出され、更にあらたな血液をとり込みます。まるで心臓のように血液を循環させるポンプの役目としてはたらき、栄養分や老廃物を運んでいます。
しかし、歯ぎしりのように強い圧力が長時間かかると、血管の内側に血栓ができ血液が流れなくなり、ついには血管が退化・消失してしまうのです。また、歯ぐきに炎症が起きて歯根膜の根もとの血管のほうまで炎症が波及すると、骨の成分が溶けだし、それを肥大化した血管が
吸収します。このため歯を支えきれなくなり、歯が歪んだりぐらついたりするのです。いわゆる「歯が浮く」というのはこのことをいい、歯根膜が腫れている状態を示しています。
こうしたトラブルを防ぐには、歯ぎしりをやめるのはもとより、実は歯ブラシによるマッサージが非常に効果的です。ブラッシングにより歯肉を刺激することは、血行だけでなく歯と歯ぐきの間を流れる滲出液の分泌を促進し、自浄作用を進行させます。あごの骨から血液を押し出す感じをイメージして、歯の根もとまでブラッシングしてみてください。
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