骨折や打撲など、さまざまな外傷がありますが、歯の外傷についてのお話をします。
歯の外傷の原因として多いのは、転倒して上下の前歯をぶつける事故です。特に、上の歯をぶつけて、歯を傷つけてしまったり、同時に唇や歯ぐきを切ってしまうことはよく起こります。
歯が欠けてしまう、歯がグラグラ動く、時には歯が完全に抜けてしまうようなこともあります。それらが複合して起きることもあるでしょう。速やかに歯科医院で処置をしてもらう必要があります。また、歯にばかり気をとられがちですが、頭をぶつけた場合などは、脳外科への受診も行ってください。
■歯が抜けてしまった
「歯が抜けた」という事態に本人も周りも動揺し、慌ててしまいますが、落ち着いて対処しましょう。電話で歯科医院に連絡を入れ、指示してもらう方法もありますね。
完全に抜け落ちた場合、抜けた歯の表面に付着した砂や泥があれば、水道の流水下で軽く流してください。長時間水道水で洗うと、歯の表面にある歯根膜が浸透圧の変動で悪化する可能性がありますので、30秒以内に留めましょう。決して歯の表面をこすったりしてはいけません(再生不能になりますから)。
抜けた歯は、生理食塩水につけて医院へ持っていくのが理想的です。コンタクトレンズの保存液も利用できます。生理食塩水はドラッグストアなどで購入できますが、手に入らない場合は、牛乳で代用します。また、飲み込まないように注意しながら舌の下に保持していくのも一つの方法です。
完全に抜けた歯でも、保存状態がよく、早期に歯の再植手術を行えば、元のように活着しますが、処置が遅くて元通りにならないこともあります。また、将来的に歯の神経が感染してしまうこともあるため、長期にわたり予後を観察していく必要があります。
■歯が欠けた、動いてしまった
エナメルや象牙質までの破折の時は、レジン材料で歯の形態を復元します。ただし、欠けたところが歯の神経(歯髄)に近い場合には、神経が細菌に感染し、痛みが出ることがありますので、歯の神経を取る「抜髄処置」が必要です。
歯が揺れたり動いている場合には、元の位置まで歯を戻して隣りの歯と固定し、しばらく様子をみます。
■顎の骨折などを伴う場合
通常の歯科医院では対処できない重症例が時にあります。その際は、口腔外科のある病院が紹介されますので、まずは急ぎ、かかりつけの歯科医院への受診をおすすめします。
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