私たちは食事の際、何げなく咀嚼していますが、このとき唾液が分泌され、食べ物と混ざり合います。普通に咀嚼して、唾液が分泌され、食塊となって嚥下(えんげ:飲み込むこと)する―。健康なときには無意識に行われるこのプロセスを、あらためて意識することは普段はありません。でも、何かの原因でスムーズに行われなくなったとき、「あたりまえのプロセス」のありがたさを実感することになります。健康は失ったときに初めてそのありがたさがわかるものですね。歯の喪失と、口から喉の神経や筋肉の障害は、要介護者にとって、切実な問題です。
高齢者はこの他に、唾液が十分出なくて食べ物がうまく飲み込めない、口の中が乾いて気分が悪い、入れ歯が当たったり口内炎が頻繁に起こるといった症状が出てきます。こうした状態を口腔乾燥症=ドライマウスといいますが、特に中高年でこの症状に悩まされる方が多くなりました。
今回は、その唾液の力についてのお話です。唾液には以下のような働きがあります。
- *消化作用
- アミラーゼという炭水化物酵素を含む。
- *潤滑作用
- 発音や咀嚼の際に、舌や歯、粘膜同士の触れ合いを円滑にする。
- *粘膜の保護作用
- 唾液中のムチンというタンパク質が膜を作り、種々の刺激から粘膜を保護する。
- *緩衝作用
- 口の中には酸からアルカリまでいろいろなpHの食べ物が入るのに対し、唾液の炭酸水素がそれらを中和する。
- *歯の成熟、再石灰化作用
- 歯はカルシウムとリン酸が豊富に含まれていて、酸性食品によって溶け出した歯をたえず再石灰化する。
- *清浄作用
- 食べ物による口腔内(特に歯の周囲)の汚れや 細菌等を洗い流す作用がある。
- *抗菌作用
- 免疫グロブリン、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリン等により、免疫、殺菌作用がある。
- *内分泌作用
- パロチン(唾液腺ホルモン)等が含まれ、骨や歯の発育を促進し、表皮成長因子により粘膜の傷の治癒を促進する。
どうです。とても多いでしょう。
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