子どもにとって、いろいろな病気の予防やワクチンはとても重要なのですが、実は幼児期には病気より事故で亡くなったり、大けがをすることの方が多いのです。何でもない日常生活の中には、想定外では済まされない、思ってもみないような事故の危険があります。注意に注意を重ねていても一日中子どもから目を離さないというのは不可能です。
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会は、子どもの傷害速報をホームページに掲載し、製品メーカー、行政、消費者庁、製品安全協会、国民生活センター、技術の専門家団体、メディアなどに適切な改善を求めています。
このような事故が起こりうるという情報を受け、各家庭で事故防止の対策をするのはとても重要です。今回は、歯ブラシによる事故の例をあげますので、予防に役立てていただきたいと思います。
歯ブラシによる刺傷
- 1例目・・・4歳男児
- ソファーの袖の上に立って歯ブラシをくわえていたが、フローリングの床にうつぶせに転倒し、歯ブラシの先端部分が3pほど折れて上咽頭に突き刺さった。救急車で耳鼻科に搬送され入院し、全身麻酔で摘出手術を行った。合併症として膿瘍形成があった。
- 2例目…1歳9ヵ月男児
- 就寝前の歯磨きの準備として歯ブラシをわたしておき、母親は夕食の後片付けをしていた。男児が歯ブラシをくわえたまま駆け寄ってきて母親の背中に勢いよく抱きついた。歯ブラシの先端が頬粘膜に刺さって、傷口から頬脂肪体が逸脱し、口を閉じられず、よだれが出ていた。入院し全身麻酔で手術となった。
歯ブラシによる傷害はめずらしいものではなく、日常生活の中でいつでもどこでも起こりうる傷害です。特に1〜2歳児に多く、歯磨き中の転倒が最多で65%、人や物にぶつかる10%、踏み台からの転落5%となっています。
歯ブラシ以外にも、箸、フォーク、鉛筆、綿菓子の芯の割り箸、太鼓のばちなどにも同様の危険性があります。歯ブラシは尖っていないのでそれほど危なくないと思われがちですが、子どもにとっては危険なものという認識を持ちましょう。メーカーにも歯ブラシの安全対策が求められています。
(前橋市 Y小児科医院)
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