食欲の維持こそ大切
高齢者の栄養摂取状況は、平均的には良いといわれていますが、個人差が大きいです。国の推奨通り野菜を1 日350g以上食べる人もいれば、70gに満たない人もいるといわれています。脂肪からの摂取エネルギーが30%超の人もいるし、15%未満の人もいます。
一方、やせの割合は80歳以上になると多くなります。元気そうに見えても、実は栄養状態が不良の人が増加するのもこの年代です。 いつまでも健康でいられるためには、食欲がある状態の維持が大切。食欲があれば口から食べられるので、体力も衰えず、活発に動けます。活発に動ければ、さらに体力がつき、食欲もわく、とよい循環になるのです。食欲がない人に比べて食欲がある人は、要介護になるリスクが半分くらいというデータも。ですから生活リズムを整えて消化液の働きを助けたり、更に誰かと一緒に楽しく食事したりすることも食欲維持には重要ですね。 さらに、目の前に食べ物があるかどうかも大切。体力が落ちると買い物や調理が負担になります。ときには宅配サービスを利用するなどして「すぐに食べる物がある」状態を心がけた方がベター。調理器具を使えることも大切です。レンジや炊飯器も「買い替えたら使い方がわからなくなった」ということがないように。
その上で、何を食べたらいいのか、ということが問題です。「年をとったから少ない量でよい」という説は根拠がありません。必要なエネルギー量は、年齢とともに若干減るものの、主には体格と活動量の多寡によって決まります。高齢であってもよく動いている人ならば、たくさん食べても大丈夫。
年をとると食べる量が自然に減り、必要な栄養素もとりにくくなりがちです。子どもに対しては成長に合わせた食事を作ってきたはずですから、成人してからも年代に合った食事を考えることが大切ですね。
毎日10種類心がけて
「カロリーを控えた粗食が体にいい」と思っている人がとても多いことも気になります。メタボリックシンドロームや、糖尿病、高脂血症といった病気の人は肉や油を控える必要があるものの、健康な人が高齢期に入ってそうした食事を続けていると、栄養不足を招くのです。
ベターホーム協会ではシニア世代前後の人に食の正しい知識をもってもらう「つるかめ運動」という活動をしています。健康長寿のためにプラスになる要因は、栄養状態がいいこと、体力があること、社会参加を続けていることです。ところが、最近は低栄養傾向の高齢者が増えているといわれています。
低栄養傾向かどうかの主なチェックポイントは、次のような項目です。
- 昼食はラーメンやうどんなど、一皿で済ますことが多い。
- 年をとったら動かないからあまり食べなくてもよいと思っている。
- 揚げ物など油を控えている。
- 肉は体によくないと思っていて、もっぱら魚を食べる。
- 野菜は生で食べることが多い。
- 1日3食食べない日が週に2〜3回ある。
これらの項目に該当が多いほど全体の栄養が足りていない可能性があります。メタボ予防の意識を引きずっていると、老化を早めるので、高齢期では「しっかり食べる」へ、ギアチェンジをしてほしいです。
毎日、肉類、魚介類、卵、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜、いも類、くだもの、海藻、油脂類の10種類を食べてください。特に、肉と魚は1対1の割合で食べた方がよく、魚だけでは摂れない栄養素が筋力の維持にも役立ちます。小さいおかずでとる「ちょこちょこ食べ」も可です。高齢になると食事作りがおっくうになりますが、無理のない範囲で続けてほしいです。
栄養と体力がそろって初めて健康が得られます。大切なのはバランスよく食べること。健康をゲットして鶴のように、亀のように長生きしましょう。
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