水を口に含んだとたん歯がツーンとしみる――こんな経験したことある人、多いですか。これ、とても不快ですよね。実は歯の神経(歯髄)は、痛覚が支配しているので、しみるのは痛みを感じているからであり、温度を感じてはいません。ちょっと意外ですね。
「歯がしみる」といういい方は、痛みと温度の感覚が一体となったあいまいな表現であり、厳密にいうと、「温度差が原因となり、それを歯髄が痛みとして感じる」というのが正確です。更に水の冷たさを感じるのは、歯ではなくて口腔内の表面、つまり粘膜上に無数にある温度センサーによるものなのです。歯の痛覚と粘膜の温度感覚とが一緒になって、脳が「歯がしみる」という独特の不快感を感じているのです。
さて、水がしみる場合、原因が歯にある場合と周囲の歯肉にある場合とに大きく分けられます。
前者の場合、まず第一にむし歯による痛みが挙げられ、その他、歯の根元が磨り減って痛みを感じる時もあります。これを「くさび状欠損」と呼びますが、原因として硬い歯ブラシと荒い研磨剤の入った練り歯磨きにより削れていく場合と、食いしばりにより歯の根元に応力が集中し削れていく場合があります。これらの症状を抑えるには、レジン充填等の処置が必要となります。さらに、むし歯やくさび状欠損でなくても、歯根の上部が露出してしみる場合があり、これは象牙質知覚過敏と呼んでいます。この症状に対しては、歯の表面シーリングやソフトレーザー照射が有効です。
さて後者の歯肉に原因がある場合ですが、歯肉や歯根膜(歯を取り囲む薄い膜)に炎症が起こると、歯と歯肉の間に空間ができ、ちょうどパッキンがへたったような状態になっています。するとこの部分に水や空気が入り、先ほどの象牙質知覚過敏を起こすことに。これに対しては、シーリング処置と同時に、歯肉等の炎症を抑える必要がありますね。その他、腫れていた歯肉が引き締まる時、一時的にしみることがあります。
以上、歯がしみるという症状に対しては、対症療法で対応できますが、原因を除去しないと再発がよくあります。痛みが強いので、ときには歯髄の除去が必要な場合も。
更にむし歯に対しては、ブラッシングや食生活の見直しが必要です。また食いしばりがある場合は、気づいたら肩の力を抜く(生活習慣の改善)、食いしばり防止用のマウスピースを装着するなどの対応を考えて下さい。
知覚過敏に対しては、 (1)ブラシを毛先の柔らかいものに替える (2)研磨剤の含有されていないペーストにする (3)フッ素の入ったペーストを使用する (4)ブラッシング時に力を入れない (5)ストロークを小さくする 等の対策が有効です。
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