私たちは食品を口に入れた時、すぐに飲み込もうせず、歯や舌で大きさや硬さを調べ、飲み込むか、かみ砕くか、口の中で溶かすか、あるいは消化できないものとしてはき出すかの判断を無意識に行っています。 形のあるものを口に入れた時には、飲み込みやすい状態になるまで、咀嚼という加工作業を行います。しかし最近は、この加工作業を口に入れる前に、製品段階で行ってしまっている食品が急激に増えています。忙しい現代社会では、食事にかける時間が安易に短縮され、食べることが単なるエネルギー摂取の手段と割り切って考えられる傾向がありますね。ファーストフード、インスタント食品、レトルト食品などが重宝されるのはこのためです。これらの食品は、保存がきく、調理に手間がいらない、味つけが濃い、軟らかい、といった特徴があり、短時間に所定のカロリーと満腹感が得られるようにできています。 私たち人間は、唾液腺から口の中に唾液という消化液の一種を分泌します。唾液に含まれるアミラーゼの一種であるプチアリンという酵素が、炭水化物を麦芽糖に分解しますが、実際に酵素が作用するのは、炭水化物と混ざり合って20 〜 30 分後、すなわち食べ物が胃に送られてからということになります。軟らかい食品は、咀嚼の必要がないほど細かく粉砕されているため、咀嚼という作業がほとんどされず、消化酵素が十分混ざりあっていない状態で胃に送られるので、胃での消化が不十分になりやすいのです。さらに、唾液のもつ解毒作用も十分働きませんから、胃や腸で中毒症状を起こしたり、発がん物質を吸収する可能性が高くなりますね。
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