日本は世界でもっとも早い速度で高齢化が進んでおり、現在、65 歳以上の人口が全人口の21%を超える「超高齢社会」に突入しています。このスピードは、欧米の数倍の速さだといわれています。医療の進歩や生活環境の改善など、わが国の優れた保健・医療システムにより「平均寿命」は延び、世界でもトップクラスの水準となりましたが、一方「健康寿命」(健康で自立して生活できる寿命)が追いついていない状況が生じています。 日本人の男女の平均寿命は、厚労省調べ(平成25 年)では、男性82.21 歳、女性86.61 歳ですが、健康寿命は男性71.19 歳、女性74.21 歳と言われています。このことは、数字上ではこの差の約10年間を寝たきりもしくはそれに近い状態、つまり要介護の状態で過ごすことを意味しています。多くの要介護の方々を支えていくことは、本人はもとより、その家族や社会全体の負担を意味し、これを解決していくことがわが国のさし迫った課題です。 これに対して、われわれ歯科医師の責務は「健康寿命」を「平均寿命」に何とか近づけるように、まず多くの歯を残し、しっかりと口から食べることにより「健康寿命」を延ばすこと、歯を失った方に対しては、入れ歯等でしっかり噛めるようにすることです。さらに要介護の方々には、歯科医療を通して自分の口から食べられる人生を送っていただくこと
でQOL(生活の質)やADL(日常活動動作能力)を支えることが大事、と考えています。つまり、歯科医療は“食べる”“話す”等「日々の生きる力を支える生活の医療」です。 「超高齢社会」において、胎児期から高齢期までの各ライフステージで適切な歯科医療が提供され、そして皆様が80 歳で20本の歯を残すことを達成し、最期まで自分の口でおいしいものが食べられるように、歯科医院はこれからも良い医療サービスを目指していきます。
かかりつけ歯科医がいる人ほど長生き
健康で長生きをする「健康寿命」は、誰もが望むことですが、セルフケアだけでは不十分です。 毎日しっかり歯を磨いているつもりでも、磨き残しがゼロということはほとんどありません。例えば、半年に1回、かかりつけ歯科医に行くことによって、自分では取ることの難しい歯垢や歯石を取ってもらうことができます。また歯や口の健康状態に問題が生じてから行くのではなく、予防やメンテナンスのために行くというのが理想ですね。 気持ちに張りがあり、心が健康な人は長生きです。社会につながっている人もやはり長生きです。高齢になっても、自分の好きなことや、生きている幸せを感じながら前向きに生きている人は強いものです。かかりつけ歯科医をもち、自分でも口腔のケアをする。そうすることによって、口と心を健康に保ち、「健康長寿」をまっとうしたいものです。
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