むし歯が深く進行すると、歯の中にある歯の神経(以下歯髄)が細菌に侵されて痛みが出てきます。歯髄が細菌感染し、炎症が起きると歯髄が腫れます。歯髄の周りの歯は硬い組織です。そのため、歯髄が腫れるとその圧力の逃げ場がなく、ズキズキとした痛みが出るのです。 歯髄が元に戻らないくらい細菌に侵されると、原因となる歯髄の除去をする治療が必要となります。これが俗にいう歯の神経を取る治療です。専門用語では抜髄と言います。 「抜髄で痛みの原因がなくなった! 」と、歯科医院への通院をやめてしまうと、どのようなことが起こるでしょうか。 歯髄がないのだから、痛みは出ないだろうと考える人もいるでしょう。確かに、歯髄が原因での痛みはなくなります。しかし治療途中で放置すると、歯髄があった場所が再び細菌に感染し、今度は歯の根の先の部分、即ち顎の骨の中に膿をもってくるのです。その後に起こる痛みは、歯髄由来ではなく、顎骨の中の炎症であるため、最悪の場合は顎骨部分の細菌が全身に広がり、敗血症、菌血症になることもあります。 そうなると、一般の歯科医院では対応できず、大きな病院での処置となることもあり、入院して治療するという事態にもなりかねません。 「歯髄を取ったから大丈夫」とは思わず、必ず最後まで処置を終えるようにしてください。歯科医院側もそのように治療するつもりで処置をしていますので、治療中断は当然、悪い結果を招くことになります。もちろん、そのような状態になる前に、むし歯や歯周病の予防をすることが何よりも大切です。
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