歯の本数や口の中のコンディションが脳卒中や肺炎と関わりが深いとされ、「口腔ケア」の大切さが注目されています。家庭でケアする際のポイントを日本訪問歯科協会ではわかりやすく提示しています。
粘膜の汚れも取る 口腔ケアと聞くとすぐに歯磨きを思い浮かべますが、歯磨きはあくまでケアの一部です。「口の中で歯が占める割合は25%だけ。しっかり歯磨きができたとしてもまだ75%はきれいになっていません」。歯の他に頬の内側、舌の上下、口の天井にあたる口蓋(こうがい)粘膜にはりついた汚れも取り除くことが重要。舌の白っぽい汚れ(舌苔)を取る時は、味覚をつかさどる「味蕾」を傷つけないように、数日かけて少しずつ落とします。姿勢は、あごを引いて体幹を真っすぐに、足はしっかりと床につけるとやり易いとのこと。 さらに重要なのは、遊離した細菌や汚れを口の中から出すこと。高齢者の場合、細菌だらけの唾液が気管内に入って誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高いからです。きちんと排出するためには、こまめにぶくぶくうがいをさせましょう。
誤嚥防止、七つの子 ふだんから口内の機能を維持することも口腔ケアの一部です。唾液の分泌は加齢とともに減少の一途をたどります。そこで顎を包み込むように手を広げて、親指を耳の後ろに固定し手のひら全体で押したり、あごの真下から耳の下までを親指で押して、唾液線を刺激します。誤嚥性肺炎の防止には、のみ込むための機能を高める「カ」音の発声練習がお勧めだといいます。「カ」音で「カラス、なぜ鳴くの」で始まる童謡「七つの子」を歌えば、楽しさも加わり、実践しやすくなりますね。
無理強いせず 相手が認知症の場合、ケアを嫌がったり口を開いてくれなかったりするのが悩みの種ですよね。その場合は、初めに介助者を認識してもらうことから始めます。処置の最中に眠りがちな人には手ぬぐいを丸めてぬらし、冷やしたもので顔をぽんぽんとマッサージし、覚醒させた状態で正面から顔を見て話しかけます。次に様子を見ながら、手、腕、肩、頬、唇と触れていき、口の中に指を入れても嫌がらないようになったら少しずつケアを始めて下さい。かまれた時は「痛い、ダメ」と短く伝えます。 ポイントは、焦らず、無理強いせず、一歩一歩段階を進めること。その人のことを大切に思ってかかわることがとても大事です。
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